イーサリアムクラシック（Ethereum Classic/ETC）は、パブリック・ブロックチェーンの一つであり、スマートコントラクト機能を持つ仮想通貨として有名です。その特徴的な要素の一つが「発行枚数」の仕組みです。発行枚数は、仮想通貨の供給量、希少性、市場価値のキーポイントとなります。特にイーサリアムクラシックは、他の主要通貨と比較して発行枚数に上限を設定していることから、その思想と仕組みが注目を集めています。

歴史的背景や起源

イーサリアムクラシックの誕生は、2016年のイーサリアム（ETH）コミュニティ内部での分岐（ハードフォーク）に遡ります。The DAO事件と呼ばれる大規模なハッキング事件の対応策を巡って意見が分かれ、元のチェーンの理念を守るグループがイーサリアムクラシック（ETC）を継続しました。

この間、発行枚数に関する議論も活発化しました。元々のイーサリアムは発行上限がなく無制限インフレ型でしたが、イーサリアムクラシックは希少性・長期的な価値維持のため、ビットコインのように「最大発行枚数の設定」へと舵を切りました。これがETCの経済設計の大きな特徴です。

仕組みとメカニズム

発行枚数の詳細設定

イーサリアムクラシックの発行枚数（最大供給量）は約2億1000万ETC（=210,700,000 ETC）に設定されています。これはビットコイン（2100万枚）と比較して10倍の枚数ですが、無制限インフレ型と比べて大きな違いがあります。

発行枚数上限は2017年12月のディフィカルティボムの削除とともに導入され、現在は “ECIP-1017” というアップグレード（Ethereum Classic Improvement Proposal）によってコイン発行量が段階的に減少する仕組み「ディフレーションモデル」になりました。

発行スケジュール（リダクションモデル）

ETCは500万ブロックごとにマイニング報酬（新規発行量）が20％ずつ減少する仕様です。これにより、新規供給が徐々に減り最終的に発行上限へと漸近します。

初期報酬： 5 ETC / ブロック
1回目のリダクション（2020年3月 / 10,000,001ブロック）：4 ETC / ブロック
2回目：3.2 ETC / ブロック
3回目：2.56 ETC / ブロック

このように約2.5年ごとにリダクション（減少）が繰り返されていきます。

メリット・メリット比較

発行枚数の上限がもたらすメリット

希少性の維持：発行数に限りがあることで、長期的な価値減少リスクが抑えられます。
インフレ抑止：通貨供給量がコントロールされているため、過剰なインフレのリスクがありません。
投資家心理の安定：将来的な需給バランスの予測がしやすく、中長期の投資戦略を組む際の指標として重要です。
ビットコインに類似した経済設計：投資家にとって馴染みやすい評価軸となっています。

一方のリスクや注意点

新規マイナーへのインセンティブ減少：報酬の減少によりマイナー（採掘者）の参加意欲低下が技術的な課題となる場合があります。
流動性とネットワーク健全性：枚数上限は流動性の制限にもなりうるため、市場の健全な発展のためには分散保有や利用促進が今後も課題となります。

他の主要仮想通貨との比較

| 仮想通貨名 | 最大発行枚数 | 発行ペース | |------------|------------------|------------------------| | ビットコイン | 21,000,000 | 半減期ごとに報酬減少 | | イーサリアム | 無制限 | 年間課金リミット有り | | イーサクラ | 210,700,000 | 500万ブロックごと20%減 |

イーサリアム（ETH）はプルーフ・オブ・ステークやEIP-1559導入により発行メカニズムが変化していますが、完全に上限を定めていません。一方、イーサリアムクラシック（ETC）は「金と同じく有限資産」という思想によって、発行上限を堅持しています。