ブラジルがステーブルコイン決済を課税対象へ、国際送金の抜け穴にメス

急増するUSDT決済を外為枠組みに統合し、税制強化に踏み込む方針が浮上した

ブラジル財務省 は、USDT（テザー：Tether）などのステーブルコインを利用した国際送金が急増する中、従来の外為枠組みを迂回（うかい）する資金移動を抑制するため、国境を越えた仮想通貨決済にIOF（金融取引税）を適用する案を検討している。

仮想通貨の決済利用が急速に拡大し、輸入税逃れや規制裁定の温床となるリスクが高まっていることが背景にある。中央銀行はステーブルコイン取引を外国為替の監視対象に組み込み、仮想通貨事業者に対する認可制度を強化する方針を示している。

ステーブルコイン決済が主戦場に、政府がIOF適用を検討

ブラジル財務省は、ステーブルコインや仮想トークンによる国際送金に対し、IOFの適用を検討している。現行の仮想資産法では通常の仮想通貨取引はIOFの対象外だが、国境を越える送金に関しては課税対象として再定義される可能性がある。

関係者によれば、今回の措置は主に規制上の抜け穴を塞ぐ目的があり、同時に財政状況が厳しい中で歳入を補う効果も期待されている。ブラジルの仮想通貨取引は急増しており、2025年上半期の取引額は2,270億レアル（約6.7兆円）に到達した。そのうち約3分の2がUSDTで、ビットコインは11%にとどまる。

政府は、ステーブルコインが投資目的よりも決済利用に偏っている点を問題視している。輸入関連税を回避するために仮想通貨で支払いが行われる事例も指摘されており、連邦警察は年間300億ドル（約4.7兆円）規模の税収が失われている可能性を示唆している。

中央銀行がFX規制を拡大、仮想通貨事業者に新たな監督体制

ブラジル中央銀行 は、ステーブルコインと特定の仮想資産取引を外国為替取引として再分類する新たな規制枠組みを公表しており、この制度は2026年2月に発効する予定だ。

制度が適用されると、国際決済やカード決済に連動した仮想通貨送金、自己管理型ウォレットとの資産移動が、外為取引として扱われることになる。併せて決議519、520、521が公布され、ブラジル国内外の仮想通貨サービス企業はSPSAV（仮想資産サービス提供会社）として中央銀行の認可を取得する必要が生じた。これにはマネーロンダリング（資金洗浄）防止、監査、開示基準、データ保護、最低資本要件（3,720万レアル=約11億円）の遵守が含まれる。

仮想通貨送金への厳格な管理

決議521号は、国境を越える仮想通貨送金に対し、従来の外為取引と同様の監視を適用する。

対象となる取引には顧客確認、取引額の制限、送金監視が義務付けられる。中央銀行は、国内の仮想通貨送金の約90%がステーブルコインによるものであり、規制強化が不可欠だと述べている。

ブラジルはラテンアメリカ最大の仮想通貨市場で、 Chainalysis の採用指数では2024年の10位から2025年には5位へ上昇。2024年7月から2025年6月の間に同国が受け取った仮想通貨は3,188億ドル（約50兆円）に達し、地域全体の約3分の1を占めた。巨大市場としての影響力が増す中、透明性と統制の確保が急務となっている。