英国の詐欺捜査局、2,800万ドルのBasis Marketsラグプル容疑で2人を逮捕

イギリスのSerious Fraud Office（SFO：重大詐欺捜査局）の捜査官は、Basis Marketsによる2,800万ドルのラグプル事件に関連して、複数の家宅捜索を実施し、2人の男性を逮捕しました。このプロジェクトは分散型ヘッジファンドの創設を目指していましたが、投資家の資金とともに消失しました。

SFOの発表によると、捜査官は南ロンドンのHerne Hillおよびウェスト・ヨークシャーのBradfordで警察とともに家宅捜索を行い、30代の男性1人と40代の男性1人を詐欺およびマネーロンダリングの容疑で逮捕しました。このBasis Marketsに対する捜査は、SFOにとって初の大規模な暗号資産関連事件となりました。

SFOのディレクターであるNick Ephgrave QPMは声明で、「我々の暗号資産分野における能力と専門知識の拡大により、暗号資産を利用して投資家を欺こうとする者を必ず追及します」と述べました。

現時点で起訴された者はいません。SFOはこのスキームを「疑わしい」詐欺と表現しており、捜査は継続中です。

Basis Marketsは当初から警戒信号があった

Crypto Sleuth Investigationsと呼ばれるグループの調査によると、Basis Marketsの立ち上げ時からすでに警戒信号が出ていました。調査によれば、Basis Marketsの創設者たちは、伝統的な金融、ソフトウェア開発、暗号資産ツール分野で合計80年以上のプロフェッショナル経験を持つと自称していました。

チームは、一般の暗号資産投資家が従来は機関投資家のみが利用できた裁定取引（「ベーシストレード」）による「デルタニュートラル」な利回りを得られるよう、分散型ヘッジファンドを作ることを目指していると説明していました。

プロジェクトはメンバーシップNFTを提供し、保有者には取引利益の一部が分配されると説明。その後、BASISトークンをローンチし、保有者にはパフォーマンスフィーの一部とBasis Markets分散型プールのガバナンス権が与えられると約束していました。

チームは2021年11月のNFT販売と翌月のBASISトークンのパブリックセールで合計約2,800万ドルを調達しました。NFT販売では合計32,000 SOL（当時約700万ドル）が集まり、完売しました。トークンセールも好調で、約2,070万ドルのUSDCが調達されました。

しかしCrypto Sleuth Investigatorsによると、資金はプロジェクトのトレジャリーに送られることなく、創設者の個人ウォレットに直接分配されていたことが判明しました。これはトークンを12ヶ月間ロックするという約束にもかかわらず行われていました。The Blockは最新のコメントを得るために調査団体にすぐには連絡できませんでした。

プロジェクトは当初、NFTとトークンセールから約1年後の2022年12月までにTVLが10億ドルを超えると予測していました。また、販売当時約1,880ドルだったNFTが、3年目の終わりまでに月18,000ドルもの利益分配を生み出す可能性があるとプロスペクタスのスライドで説明していましたが、後にこの数字は累計3万ドルに修正されました。

しかしその時点までにプロダクトは一切提供されず、2022年6月にはプロジェクトが突然運営停止を発表し、その後すぐに音信不通となりました。投資家への返金もなく、創設者たちは数ヶ月前からDiscordで高級腕時計の購入を自慢していました。

「Basis Marketsの『トレジャリー』には投資家に返金するだけの資金は残っておらず、プロジェクトの貧弱な『ロードマップ』を構築するための追加プログラマーを雇う余裕すらなかった」と調査団体は記しています。

創設者の一人で「TraderSkew」として知られ、調査団体によりAdam Cobb-Webbと特定された人物は、CFTCによって「2021年12月16日頃から2022年1月14日まで、New York Mercantile Exchange, Inc.（NYMEX）で取引されたWest Texas Intermediate（WTI）ライトスイート原油先物契約において複数回のスプーフィングを行った」と認定されました（CFTCのプレスリリースより）。

同庁は2023年8月にCobb-Webbに対する訴追および和解を行い、15万ドルの罰金と1年間のCFTC指定取引所での取引禁止を命じました。