xUSDの後、USDXプールも枯渇したようです

「USDe型ステーブルコイン」の欠陥が明らかになり始めている。

執筆：Eric，Foresight News

xUSDの発行元であるStream Financeの破綻理由がついに昨日明らかになった。Deltaニュートラル戦略が極端な相場でADLにより担保資産に損失をもたらし、資金をサードパーティにオフチェーンで運用させたり、ループレバレッジ戦略によるリスクが積み重なった結果、サードパーティが約1億ドル近くの損失を出した後に一気に爆発し、最終的に債務超過となった。

筆者が2023年に翻訳した、コロンビアビジネススクール教授Austin Campbellによる記事では、Ethenaが発行するUSDeはステーブルコインではなく、Ethenaの構造的金融商品のシェアであるという見解が示されていた。

xUSD自体のペッグ外れも、この「ステーブルコイン」を基盤とした多くのDeFi戦略や、xUSDを担保とした借入ポジションに影響を与えた。Deltaニュートラル戦略によって担保価値を安定、あるいは緩やかに増やすという戦略は、市場の極端な変動や運用の不透明さによって打撃を受けた。

さらに懸念すべきは、xUSD事件がこの物語の終わりではないかもしれないという点だ。

USDXで借りられるものはすべて借り尽くされた

Xのユーザーである0xLokiは昨日夜、もともと1日待てばsUSDXの鋳造に使ったステーブルコインを償還できるはずだったが、あるアドレスが年率30％以上の金利を無視して、Euler上でUSDXやsUSDXを担保に借りられる全てのステーブルコインプールを枯渇させたと投稿した。

ここでUSDXを知らない方のために簡単に説明する。USDXはusdx.moneyが発行するステーブルコインで、同プロジェクトは昨年末に2.75億ドルの評価額で4,500万ドルの資金調達を完了したと発表している。USDXの発行モデルはEthenaとほぼ同じくDeltaニュートラル戦略で、USDXをステーキングするユーザーはショートファンディングレートの収益も得られる。Ethenaと異なるのは、usdx.moneyはビットコインやイーサリアムだけでなく、一部のアルトコインも戦略の主役として利用できる点だ。この方法はリターンを拡大するが、リスクも増大させる。

筆者の調査によると、昨日夜のEulerのデータでは、プラットフォーム上で唯一USDXとsUSDXを担保に借入できるRe7 Labs Clusterにおいて、USDT、YUSD、USD1、さらにはWBNBやBTCBまですべて借り尽くされていた。

Lista DAOでもUSDXやsUSDXを使ってUSDTやUSD1を借りられるプールが同様に枯渇しており、sUSDXを担保にUSDTを借りる金庫の借入金利は執筆時点で800％を超えている。もし借り手が返済を選ばなければ、この金利は強制清算までさらに上昇し続ける。

また、0xLokiはMorphoやSlioにも同様のレンディングプールがあると述べているが、執筆時点では筆者は関連情報を確認できなかった。おそらくプラットフォーム側がフロントエンドから該当プールを削除した可能性がある。しかし事実として、DeFi市場でUSDXやsUSDXを担保に借りられる資産はほぼ一掃された。xUSDと同様、USDX系資産の市場を作ったのもRe7 CapitalとMEV Capitalである。X上のユーザーによれば、Re7 CapitalのメンバーがEuler DiscordでStables Labsと対応策を協議中だが、現時点で明確な結論は出ていない。

誰が「借金」を狂ったようにしているのか？

XのユーザーArabe ₿luechipは昨日朝、異常に気付き、各市場で借入資金を使い果たした4つのアドレスをリストアップした。

そのうち0x50deで始まるアドレスは、今年7月下旬から0x246aで始まるアドレスからUSDTを受け取りBinanceに送金し、10月下旬からは0x5dbfで始まるアドレスから大量のUSDXや他の経路から得たsUSDXを受け取り、Euler、Lista DAO、SiloでUSDT、USDC、USD1などのステーブルコインを狂ったように借り、ほぼすべて借りた直後にBinanceへ送金している。

借りられるものがなくなった後、このアドレスはPancakeSwapでUSDXをUSDTに交換し、取引所に送金するという行動を、11時間前まで続けていた。

0x5bdfで始まるアドレスもEulerやLista DAOで大量のUSDXを担保にUSDTやUSD1を借りていたが、現在アドレス内には借りたステーブルコインは一切残っていない。

残り2つのアドレスについては、調査の結果、大量のUSDXやsUSDXを保有し、かつて担保借入の履歴はあるものの、それぞれ9月と6月に活動を停止しており、今回の事件との関連は薄い。

最も疑わしい0x50deで始まるアドレスは、Arkhamによって元Babel FinanceおよびHOPE創業者Flex Yangのアドレスの可能性があるとマークされている。最も直接的な証拠は、Flex Yangと直接マークされた0x246aで始まるアドレスが4か月前に2度、0x50deで始まるアドレスにUSDTを送金しており、それがステーブルコインを借り続けて取引所に送金する行動の始まりだったことだ。

また、LinkdeInの情報によると、Flex YangはStables Labs、すなわちusdx.moneyの背後にいる会社の創業者である。

創業者と直接関係のあるアドレスが借入金利を無視してステーブルコインを借り、さらにPancakeSwapで頻繁にUSDXをUSDTに交換し、得たステーブルコインを直接取引所に送金している。これらの異常な行動に多くのユーザーが危険な兆候を感じ取っている。X上では、USDXもまた「10.11大暴落」でADLやその他の理由により担保資産不足の問題が発生した可能性があると考えるユーザーもいる。

Stables Labsプロジェクトのマルチシグアドレスは2日前にPancakeSwapのステーブルコインプールから約2,000万ドルの流動性を削除した後、合計1,000万ドルの流動性を追加したが、執筆時点で同プールには明らかな流動性の偏りが生じており、これは0x50deで始まるアドレスが昨日午後13:44から複数回に分けてPancakeSwapで取引したことと関係がある可能性がある。

分散型ステーブルコインには透明性が急務

usdx.moneyの公式サイトによると、本日午前9時時点で、取引所には依然として6.8億ドル以上の準備資産があり、その大部分がBinanceにある。

しかし、中央集権型取引所の不透明性を考慮すると、ユーザーは最近の動きからこの資産報告の信憑性に疑念を抱いている。現時点で何が起きたのかを証明する十分な証拠はないが、創業者と直接関係するアドレスがあらゆる手段で逃げ出そうとしていることから、何らかの問題が発生していることは間違いない。また、Stables Labsが計画している米国債を基礎資産とするUSD0xについては、いまだに情報がない。

Deltaニュートラルを売りにしたステーブルコインはEthenaから人気となったが、十分なコントラクト流動性を支える必要があるため、多くのプロジェクトは中央集権型取引所を選択する。これにより、いわゆる「ステーブルコイン」の裏付け資産がブラックボックス化し、プロジェクト側以外は実態を知ることができない。定期的な第三者監査が実現しない限り、規模の大きなプロジェクトで問題が発生すれば、DeFi分野でバタフライ効果を引き起こす可能性がある。

透明性以外にも、現在のDeFiプロトコル間のネスト構造も複雑化しており、多くの構造的プロダクトはもはや整理しきれないほど複雑になっている。例えばcrvUSDは、crvUSDを基礎資産とするステーブルコインを使ってさらにcrvUSDを発行できる。このようなネストは本質的にはレバレッジの問題かもしれないが、同様の事例がDeFiのリスク管理の問題を次々と露呈させている。

2022年のベアマーケットでは多くの高レバレッジの中央集権型レンディング機関が破綻したが、少なくとも帳簿を出せばどれだけ借金があるかは計算できた。今のDeFiの深刻な問題は、すべての情報がオンチェーンで公開されていても、最も基本的な基礎資産にどれだけレバレッジがかかっているのかを計算できない点だ。

そしてUSDe型ステーブルコインの問題に戻ると、XユーザーのMindaoはこのモデルがすでに否定された可能性があると率直に述べている。5年以上の発展を経て、私たちは再び大きな代償を払ってDeFiがどう進化すべきかを見直す必要があるのかもしれない。